【開催報告】2019年度「アジア留学生インターン受入れ助成プログラム」助成事業報告会

2021年10月10日(日)、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト特別基金「アジア留学生等支援基金」の「アジア留学生インターン受入れ助成プログラム」報告会をオンラインで開催しました。

オンライン報告会に集まっていただいたみなさん

本プログラムは、2012年度から毎年実施しており、例年6月頃に報告会を開催していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から2019年度報告会の開催を見合わせ、このたびオンラインで開催しました。

2019年度は、日本の市民団体11団体が、中国、マレーシア、モンゴル、ベトナムからの留学生11名をインターンとして受け入れました。この報告会では、インターン生と受入れ団体4組に、インターンシップで実施した活動や学んだことなどについて発表し、本基金関係者、ACT運営委員、信託管理人、一般の学生、社会人など23人が参加しました。

開会のあいさつでは、ACTチーフ・プログラム・オフィサーの鈴木が、ACTと特別基金「アジア留学生等支援基金」の概要を説明した後、過去8年間の「アジア留学生インターン受入れ助成プログラム」の実績を紹介しました。本プログラムでは2019年度末までの8年間にアジア14か国と地域からの留学生140人が、87団体でインターンを経験し、在籍大学は北海道から沖縄まで計63校にのぼります。留学生の内訳は学部生71人、大学院生69人で、女性103人、男性37人でした。2019年度は、10校の学部生7人、院生4人が、国際協力、社会教育、まちづくり、環境保全、文化・芸術、日本語教育、国際交流、子どもの健全育成など14分野で活動する市民団体でインターンを行いました。

続いて、次の4団体・インターン経験者による発表を行いました。(所属・役職は報告会当時)

受入れ団体:(特活)ソーシャルバリュージャパン(代表理事 伊藤 健さん)
インターン生:ヨーン・ペーンさん(マレーシア出身、筑波大学)

(特活)ソーシャルバリュージャパンは、社会的インパクトの研究、教育、実践を推進することを通じて日本、そして世界の社会的生産性の向上をもたらし、社会課題の解決を促進することを目的としています。2012年にSROIネットワークジャパンとして活動を開始し、2018年に団体名を改称しました。主な活動としては、社会的インパクトの評価手法の研究開発、同手法を用いたトレーニングやセミナーの実施を主とする教育プログラムの提供などを行っています。2019年度は、若い人に知見をもってもらうこと、学業と合わせて実践的な経験をもってもらうことで複合的に学んでほしいという思いがあり、インターンを受け入れました。代表理事の伊藤さんは、ビデオメッセージで報告しました。

東京都内のシェアオフィスで打ち合わせをするヨーンさんと伊藤健さん(手前)

高校生の時からNGOの活動に参加し、筑波大学で国際協力について学び、将来は国際協力の分野で働きたいという希望があったヨーンさんは、キャリア計画を明確にしたいと考え、インターンシップに応募しました。そして、NGOや企業との協働の実績があり、社会的インパクトの定量評価手法という未知の分野に取り組んでいるソーシャルバリュージャパンでインターンシップを行いました。

ソーシャルバリュージャパンは、リモートワークが中心で、シェアオフィスではたらく職員もおり、ヨーンさんは、企画書や広報資料の作成や翻訳、企業訪問、イベントの運営補佐、議事録作成などをリモートで行いました。そして期間の約3分の1を対面で行いました。

ヨーンさんはインターンシップを通じ、業務に適した日本語の使い方や翻訳力、スケジュール調整の仕方、情報を収集しまとめる文書作成能力を向上することができたこと、そして、組織内ではある事柄について異なる意見があり、多面的・多角的に考える重要性を学んだと話しました。とくに、インターンシップで学んだ情報収集法と論理的思考は大学院の入試でも役に立ったそうです。『学問の蓄積の大切さを実感しました。ひとつの社会問題の解決においては、たくさん調べ、もっと学ばなくてはいけないと考え、大学院に進学する予定です。』

指導した伊藤さんは、言語能力だけでなく収集した情報を整理し、的確な内容にまとめ、成果を出すヨーンさんの力を高く評価し、京都大学大学院に進学し、東南アジアの研究をされるヨーンさんの今後の活躍を楽しみにしていると期待を寄せました。

 

受入れ団体:(公社)日本ユネスコ協会連盟(インターン担当 宍戸亮子さん)
インターン生:トフシンバヤレ・タミラさん(モンゴル出身、慶應義塾大学)

(公社)日本ユネスコ協会連盟は、世界で初めて、UNESCO(国連教育科学文化機関)に協力する市民グループの集まりとして発足しました。日本が1951年にUNESCOに、1956年に国連に加盟して以降は、UNESCOの設立の精神を広める活動を行っています。全国にあるユネスコ協会の事務局を担うとともに、教育分野では国内外の教育格差をなくすため、貧困や内戦で教育が受けられない人たちに学ぶ場を提供する「世界寺子屋運動」、返還不要の奨学金給付、防災・減災教育を含む「東日本大震災子ども支援」などを行っています。その他、文化、次世代育成・相互交流促進でもさまざまな事業を展開しています。

国際協力と教育に関心があったタミラさんは、①「第75回日本ユネスコ運動全国大会in東京」の準備・運営補佐、②「三菱アジア子ども絵日記フェスタ」でのモンゴルの子どもたちから届く絵日記の翻訳、③書き損じはがきや切手の仕分け、④団体の広報記事の英訳、の4つの業務を行いました。全国大会では海外からのゲストの出迎え、大会概要文の翻訳、報告書作成のための文字起こしと編集などの業務を経験しました。

モンゴルから届いた絵日記の翻訳作業をするタミラさん

タミラさんは『全国大会ででは、「世界寺子屋運動」をはじめ、NGO活動には参加する人、運営する人、支援者、ボランティアなどさまざまな人がいて成り立つことがよくわかりました。「子ども絵日記フェスタ」では、モンゴル語の日記を和訳し、日本では馴染みのないモンゴル固有の風習や地名に備考を設けるなど、自分だからできる工夫をしました。義務教育だけでなく、社会教育や草の根運動が子どもに与える影響を知りました。そして、国籍、年齢、立場が異なる人たちと接する重要性も学ぶことができ、国際的に活動するNGOで貴重な経験を積むことができました』と振り返りました。

受入れ団体の宍戸さんによると、タミラさんが関わったのはいずれも民間ユネスコ運動の根幹をなす重要な活動です。タミラさんの高い語学力、ITスキル、モンゴル出身であるという貴重なバックグラウンドと、業務に対する前向きな姿勢に、職員や関係者が助けられたと、高く評価しました。

 

受入れ団体:(特活)劇研(事業担当、沢 大洋さん)
インターン生:ヴォ・タオ・ティータンさん(ベトナム出身、福井県立大学)

(特活)劇研は、京都を拠点に、演劇やダンスなどの芸術文化の振興支援を行うことで、芸術文化を通じた国際交流等に寄与し、市民生活を豊かにすることをめざしています。市民活動センターの指定管理(京都市より受託)、まちづくり事業、イベントの運営や日本語学校と連携した多文化共生事業を行っています。

団体の活動の幅が広がるにしたがい、地域に住む外国人や留学生との関わりが増え、多文化共生事業を拡充することになり、留学生に在留外国人の方たちとの架け橋になってもらいたいと期待し、留学生インターンを受入れました。

タオさんは、劇研の業務内容に関心をもち、現場の雰囲気を肌で感じ、京都のことをもっと知りたいと考え2019年8から9月にかけて、インターンシップに参加しました。

インターンでは、イベント(お祭り)の運営補佐、市民活動センターの受付、広報誌「いきいき通信」の編集に関わる業務を行いました。「ようせい夏祭り2019」では、言葉でしか知らなかった“盆踊り”を初めて体験しました。「いきいき通信」の業務では、掲載記事の企画段階から行うことに不安を感じたそうですが、「とりあえず考えてみよう」という気持ちで、周りの人に相談して進めることができ、この経験が卒業論文の執筆でも活かされたそうです。

「いきいき通信」のインタビューをするタオさん(左手前)

『私は学生時代にアルバイトをしていた飲食店で、忙しくても一人で仕事をすることに慣れてしまっていたのですが、失敗を抱え込みすぎると、次の仕事が進まないこと、そして、仕事とは一人でやるものではなく、周りの人とコミュニケーションをとりながら、みんなでやることを学びました。この経験は、大学卒業後に就職した日本企業の職場でも活かされていて、失敗をしてもその反省を活かし、前向きに次の業務に取り組むことができています。締め切りを守ることや、「ホウレンソウ」(報告・連絡・相談)の大事さも、インターンシップを通して学びました』

受入れ団体の沢さんは、タオさんと仕事をしたことで、職員が多文化共生についてより関心をもつようになり、理解が深まったなど、職員の意識にも変化が見られ、真摯に活動に取り組んでくれたタオさんに感謝していると話しました。インターン受入れ後、劇研では、多文化共生を考えることを目的とした、やさしい日本語でよむ冊子の発行、多文化共生をテーマにしたフェスティバルの開催など、地域の多文化共生にさらに取り組んでいます。

 

受入れ団体:(特活)まちづくりスポット(専務理事 田辺友也さん)
インターン生:キュウ・ギョウセキさん(中国出身、岐阜大学)

(特活)まちづくりスポット、通称「まちスポ」は、「人と人、ヒト・コト・モノを結ぶことで地域の原動力を活かします!」をミッションとし、企業とNGOが連携して生まれた団体です。観光地である飛騨高山の、多くの地元住民や観光客が集まる商業施設内に事務所兼市民交流スペース「まちスポ飛騨高山」(団体本部)を置き、活動しています。

今回キュウさんがインターンシップを経験した「まちスポとやま」は富山県富山市にあるサテライトオフィスで、富山市民の生活の質の向上をめざす官民複合施設内にあり、地域の町内会的役割を果たす協議会の事務局業務、市民向けの講座・イベント開催などを通して、住民間の交流とコミュニティ活動の促進をめざしています。

2013年以降これまでに30名以上(そのうち留学生は10名以上)をインターンとして受入れ、人口減少が大きな課題となる中で新たな地域づくりを担う若者を育成しています。その中でも富山市は、市外から移住・転勤してきた人が多いという特徴があり、「地域住民の間に顔の見える関係をつくり、そこに留学生に関わってもらいたい」という思いから、キュウさんをインターンとして受け入れました。

キュウさんは、発表タイトルを「ここで繋がったもの、ここから始まったもの」とし、まちづくりスポットのスローガンを引用しました。発表の冒頭、『インターンシップに参加したことで自分自身がどれほど大きな影響を受けたかについて、共有する機会があって嬉しい。大学の先生から『本の外の世界を見たらどうか』とアドバイスされたことから、インターンに応募しました』と、応募の経緯を話しました。「まちスポとやま」では、通常業務のほか、「元気づくりプロジェクト」のコーディネーター補佐、団体SNSでの活動体験記の掲載などの業務を経験しました。

受入れ団体の田辺さんは、キュウさんが「とやまし元気づくりプロジェクト」に関わったことで地域の人たちから、「インターンシップをしている留学生はどんな人なの?」「今まで知らなかった国の知識を得ることができた」「元気をもらえた」などの声があり、地域住民と団体の交流が増えたこと、そして、ゼロだった学生ボランティア、インターンがそれぞれ10名、7名に増えるなど、団体にも前向きな変化が起きたと話しました。

健康に関する講座で参加者と意見交換をするキュウさん(左手前)

大学院を修了し、コロナ禍の約1年間、中国に帰国していたキュウさんは、再度来日し、現在は大阪大学の博士課程で理論言語学を専攻しています。『インターン指導者の中川さんに 「失敗しても大丈夫、埋めることはできる。大事なのは参加すること」を教えてもらいました。失敗すること、人と交流することを恐れないこと、ささいなことであっても真面目に積極的に取り組めば成果が出ることを学び、まちづくりスポットが周りの世界と自分を繋げてくれました』と、ユーモアを交えて話してくれたキュウさん。今後も、日本での研究や日々の生活を通し、新たな世界と繋がっていくことを願っています。

報告会参加者からは、「インターン生の発表に感銘を受けた」「感動した」「インターン生それぞれに合った団体でインターンシップを経験できたことがよかった」「インターンの受入れを通じて、小規模団体でも大きな成果を出すことができ、感謝している」など、さまざまな感想をいただきました。

質疑応答では、「インターンシップの内容と留学中の専攻や、その後の進路との関連性」「インターンは受入れ団体の事業や活動に新しい提案をしたか」「受入れ団体は、短期間で指導する際にどのように工夫をしたか」などの質問があり、インターンと受入れ団体がそれぞれ答えました。

インターンシップの実施から約2年後の報告会開催となりましたが、留学生インターンのその後についても知ることができたことがよかった、という感想もいただきました。報告していただいたインターン生と受入れ団体の皆さま、参加された方々に御礼申し上げます。

報告:堀部(プログラム担当)