ACT 公益信託アジア・コミュニティ・トラスト

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2014年7月12日

子どもが中心となり地域の問題を解決【カンボジア】

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緑豊かな山の風景が広がるビールベン郡。
ポーサット州の中心部からも車で3時間
かかります

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広大な土地にひろがるプランテーション。
ここで働く労働者たちは、敷地内に住んで
いるそう

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プラモーイ小学校の生徒会は図書室で活動
しています。そのおかげで、図書室で勉強や
調べ物をする生徒がふえた
そうです

カンボジアの首都プノンペンから車で西へ6時間。タイと国境を接するポーサット州ビールベン郡は熱帯雨林に覆われた山岳地域です。道路、電気、学校、保健所などの基本的なインフラやサービスが不十分で、学校に行かずに働いたり、人身売買の犠牲になる子どもも少なくありません。しかし、子どもや若者が地域開発や問題解決に参加して、自分たちの意見やニーズをうったえる機会がありませんでした。
ACC21が事務局をつとめる公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)では、2013年度から現地NGO・COCD(子どもと開発のためのカンボジア団体)による「子どもと若者による地域開発とチョーン族の文化保全」事業を支援しています。2013年11月末に子どもと若者による地域開発の推進活動の現場を訪れました。

住民の4割は貧困世帯

ビールベン郡に暮らす住民の95%以上は小規模の自給自足農業に従事し、陸稲、換金作物、野菜、果物の栽培を主体に、森林での狩猟や自生果物・キノコの採集なども行って生計をたてています(農業従事率の全国は72%)。カンボジアでは国民の約25%が貧困とされていますが、ビールベン郡では貧困世帯が43.2%にもなります。
住民の半数は他州から移住してきた人々で、土地の権利をもっていない人も多くいます。現場周辺には、紙の原料となる木を栽培する数千ヘクタールもの大規模なプランテーションが複数あり、企業の進出もすすんでいます。土地の権利がないと、住んでいる土地が知らぬ間に国から企業に貸し与えられ、家を離れざるを得なくなることもあるのです。

自分たちの問題は自分たちで解決

子どもに目を向けると、6~14歳の25%以上が学校に通っておらず、高校(後期中等教育)の進学率は6割未満です。ほかにも児童労働、人身売買、家庭内暴力、不衛生などの問題を抱えています。
現地NGOのCOCDは、学校の問題に取り組む「生徒会」と、地域の問題に取り組む「子ども会」という2種類のグループを通じ、子どもが自らの問題について、大人や行政と共に解決していく支援をしています。

学校での問題解決に取り組む「生徒会」

プラモーイ小学校の生徒会では、クラスの投票で選ばれた4~6年生の18人が、COCDの支援で子どもの権利や児童労働について学び、活動しています。メンバーのひとり、リヴ・ウントンくん(小学5年生)に"生徒会の役割は何ですか?"と聞くと、「生きていくのに必要なスキル(ライフスキル)として、野菜の栽培法を学んだりしています。子どもの権利や衛生的な習慣、図書室の活用法について情報普及をしたり、『良い子キャンペーン』(先生や親の言うことをよく聞く、勉学に勤しむ、善行に励むなど)などもしています」とのこと。ほかにも、教室の清掃活動や蚊よけのための木の伐採(マラリア予防)などを行っているそうです。
サウ・ソック校長は、「生徒会活動が活発になったことで、全体的に学習する習慣が月、宿題にも積極的に取り組む子が多くなりました。生徒会役員には成績の良い子どもも多いため、今後はほかの子どもたちに勉強を教えたり、教師の暴力などのクラス内の問題を校長の私に報告するようになってほしい」と話しました。


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ストゥン・トゥメイ村の子ども会。赤色シール
は家庭内暴力、緑色シールは児童労働
などと決め、地図上に次々と
貼っていきます

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子ども会メンバーの母親たちは、15年以上前
に南部タケオ州から貧しさのために移住
してきたそうです。右がジョイ・ピアップ
さん(プラモーイ村)

自ら地域の問題を特定し、アクションを起こす「子ども会」

一方、「子ども会」は、学校に通っているか否かにかかわらず、地域に暮らす子どもたちが集まって、身の回りの問題に取り組むグループです。
ストゥン・トゥメイ村には、2013年9月に設立された子ども会(メンバー数15人、うち女子9人)があります。この村では、農作業や缶売りなどで家計を助ける子ども(12~15歳)が多く、児童労働や学校中退者が多くいます。実際、子ども会メンバーのうち5人は学校に通っておらず、その一人であるヨーン・ソクランさん(16歳)は、弱い立場にいる子どもたちの役に立ちたい」と、子ども会への参加を決めたそうです。
訪問時、子ども会メンバーは、模造紙に地図を描き、村の中で児童労働や家庭内暴力、貧困などの問題がある家庭に印をつけていく作業をしていました。他人の家庭の内情がどうしてわかるのか尋ねると、「それぞれ近所の家のことはよく知っているので、みんなで集まれば、村全体の情報が集まります」とのこと。次回の活動からは、完成した地図をもとに家庭訪問をし、親が子どもの権利を理解し、家庭を解決できるよう働きかけるとのこと。子ども会では以前にも家庭訪問をしたことがあり、「子どもの権利についてCOCDからトレーニングを受けた」と話すことで、保護者たちに耳を傾けてもらえるよう工夫しているそうです。
子ども会メンバーの母親ジョイ・ピアップさんは、子ども会活動に参加してから息子の成長が著しいと喜んでいます。「勉強に励み、礼儀正しい振る舞いをするようになりました。家事などを手伝う時間は減りましたが、子どもが学び、チームで活動する経験ができることは良いことだと思っています」。

子どもからの提案7つを地域開発計画に反映・実行

以上のような、子どもたちの取り組みが、地域にどのような影響を与えているのか、プラモーイ・コミューン*の自治体関係者にお話を伺いました。2013年には初めて、これまで大人だけで行っていた「コミューン投資計画」の策定プロセスに、子ども会や生徒会の代表者が参加できるようになりました。
「女性と子どものコミューン委員会」のロホティさんは、子どもが参加する意義について、「子どもの問題は、子どもたち自身が良くわかっていることに気が付きました。例えば、学校に行きたいと思っている子どもにとっては、学校が遠すぎることが重要な問題なのです」と話しました。計画策定の会議では、子どもたちから提案された12の事項のうち、中学校の設立、学校が遠い子どもへの自転車の提供、栄養価の高い給食の提供、家庭内暴力・児童労働・人身売買・子どもの権利保護についての対策強化など、7つの提案が実際に計画に盛り込まれ、順次実行に移されています。
COCDでは、今後も子どもと大人の双方が協力しながら地域の問題を解決していけるように、支援を続けていきます。


*コミューンはカンボジアの行政区分のひとつで、郡の下位。各コミューンには、選挙で選ばれるコミューン評議会があるほか、「女性と子どものコミューン委員会」が置かれ、女性や子どもに関わる問題に取り組んでいます。

<報告:辻本 紀子(ACC21スタッフ、ACTアソシエート・プログラム・オフィサー)>