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2014年6月02日

農村と都市、それぞれの子どもをめぐる課題【カンボジア】

カンボジアは、18歳未満が人口の約37%を占める、子どもの多い国ですが(日本では約16%)、子どもや若者に対する支援や施策が十分ではありません。たとえば、5歳未満で死亡する乳幼児の割合は1,000人中40人(日本では3人)、小学校の最終学年(6年生)まで残る割合は61%(政府発表)、児童労働に従事している子どもは36%など、安全な環境のなかで健全に育ち、教育を受ける権利が保障されていません。 昨年12月に現地を訪れた際、子どもたちがどのような状況におかれているのか、子どもや教育に関わる問題に取り組む複数の現地NGO関係者から、話を伺いました。

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農村部の小学校(プーサット州)。
コンクリート製の校舎も増えてきたが、
写真のような木造校舎も多い

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自宅から遠く中学校通学をあきらめて
しまったヨウン・ソクランさん(左端)。
いまは働きながら地元NGOの
COCDが支援する「子ども会」に
参加し、子どもの権利学習や
啓発活動に参加している

中学校になると就学率、出席率が一気に下落 -とくに農村部が深刻

カンボジアで多く指摘される問題の一つは、教師の給与の低さです。給与引き上げについては、長く抗議活動が行われており、2013年9月には最低額が月50ドル(約5,100円)から80ドル(約8,100円)に引き上げられました。しかし、月80ドルという金額は、同じく抗議活動が頻発している縫製工場の労働者の最低賃金(月100ドル)にも達しておらず、家族を養うのに十分な額ではありません。事実、現在も250ドル(約25,400円)への引き上げを求めて、ストライキなどの抗議活動が続けられています。

カンボジアで教育の課題に取り組むネットワークNGO「NEP」(Network of Education Partnership)のチン事務局長によると、「給与が低いので副業をする教師が多く、学校での仕事に十分な時間を割いていませんし、モチベーションも低いです。結果、子どもたちは小学校で基礎をしっかり学べず、中学校に進学したとしても、授業についていけずに途中で退学してしまう子が多いのです」とのこと。カンボジアでは日本と同様に義務教育は9年ですが、小学校(初等教育、1~6年生)の就学率が約69%であるのに対し、中学校(前期中等教育、7~9年生)の就学率は約17%です(出典:外務省 )。

さらにチン氏は、「特に地方では中学校の数が少ないので、家から遠くなり、通学を諦めてしまう子どもが多い。教育環境では都市部より農村部が厳しく、退学問題では小学校よりも中学校のほうが深刻なのです」と指摘しました。

同じく昨年12月にNEP(Network of Education Partnership)のメンバー団体で、子どもの権利や子どもの参加の促進などに取り組んでいる「子どもと開発のためのカンボジア団体(COCD)」(2013年度からACTで支援)の事業地を訪れました。ここは、プノンペンから車で6時間かかる山岳地域にある、プーサット州ビールベン郡の農村部です。NEPのチン事務局長が言われたように、この郡でも小学校22校に対し、中学校は6校しかありませんでした。ストゥン・トゥメイ村に住むヨウン・ソクランさん(16歳)も、自宅から遠いため進学をあきらめた一人です。「中学校は村から10キロメートル離れているため、通い続けるのは無理だと思いました。いつかまた勉強を続けられたらと思っていますが、今は缶を売ったり農業を手伝うなどして、家計を助けています」。

COCDは、ソクランさんのように学校に通っていない子どもでも参加できる「地域の子ども会」や小中学校の「生徒会」の設立・能力強化を通じて、子どもたちが、自分たちが直面している課題やニーズを地域の開発計画・実施に反映させられるように支援しています。この結果、2014年の地域の開発計画には、子どもたちから提案のあった「新しい中学校の設置」や「学校に行けない子どもたちのための自転車の提供」などの要望が取り入れられました。

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レンガ工場で働く子ども。レンガの運搬は
重労働であるほか、製造過程では火を
使うなど、危険を伴う作業が多い
(プノンペン市)

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レンガ工場の敷地内の住居。製造したレンガ
の数に伴って収入が変わるため、家族
総出でレンガの製造に取り組んで
いる例も多いという(プノンペン市)

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タイニー・トゥーンズのセンターでダンスを
学ぶ子どもたち。教師の大半はスラム
の出身なので、よい相談役だ(プノンペン市)

危険な労働に従事する都市の子どもたち

一方、地方から、職を求めて都市部(プノンペンや州都など)や近隣諸国(タイやベトナムなど)に子どもを連れて移住する人々がいます。子どもたちも工場(レンガ製造、塩田、タバコの生産など)や国境での荷物運搬などの危険な肉体労働をしており、腕を切断するなど大けがを負うこともあります。また、子どもだけが働きに出されることもあり、首都や州都で家事労働に従事させられる子どももいます。児童労働だけでなく、人身売買に巻き込まれたり、犯罪に加担してしまうリスクも高いのです。

子どもの権利を推進するネットワークNGO「NGO CRC」(NGO Coalition on the Rights of the Child)のメア事務局長は、「カンボジアの労働法は12歳未満の労働を全面禁止しており、18歳未満の子どもを危険な労働や夜勤に就かせることはできません。さらに、15歳未満の子どもを働かせる場合は、定期的に学校に通わせなければならないなど、制限が設けられています。しかし、親が子どもを労働させるために、地方自治体の職員に賄賂を渡して『18歳以上である』という実年齢とは異なる証明を出してもらうこともあり、労働法が適切に執行されていないことが大きな問題」だといいます。メア氏は「実態としては、若ければ5歳くらいから何らかの労働に従事させられている例があります。この問題を解決するためには、親に対して子どもを労働にやらず、学校に通わせるよう説得することが重要ですが、家庭の経済状況が貧しいために、説得を受入れられないことも多いのです」と続けます。

このような状況にある子どもたちを支援するひとつの方法としては、以前このコーナーで紹介した「ソヴァンナ・プーム」(2012年度からACTで支援)の取り組みのように、小学校や中学校での教育にかかる家庭の負担を軽減するために、奨学金や学用品の支援をすることが挙げられます。また、子どもが継続的に学校に通い続けるためには、親の生計向上が重要です。そこで、ソヴァンナ・プームでは、現在ACTで支援している奨学支援の活動に加え、家庭の生計向上支援のためのプロジェクトも同時に行っています。

さらに、首都プノンペンで活動するNGO「タイニー・トゥーンズ」(2014年度からACTで支援)は、児童労働や虐待、薬物乱用、DVなどのリスクにさらされているスラム地域の子どもたちに、ダンス・音楽などのクリエイティブな表現方法や、読み書き・算数などを無償で教える活動を行っています。こうした教育活動を通じて、子どもたちが自分たちを芸術的に表現する力や基礎的な学力を身に着け、健全で建設的な社会の一員となることを支援することを目指しています。 親にとっては、自分たちが働きに出ている間、子どもたちを安全な環境に置き、無償の教育を提供できるメリットがあり、タイニー・トゥーンズの活動は口コミで広がっているようです。

ここまでご紹介したように、カンボジアの子どもをめぐる問題は多様かつ複雑で、ひとつの支援活動ですべての問題を解決することはできません。現地では、数多くのNGOが、それぞれの得意分野を活かし、互いに協力しながら、子どもの健全な育成のための活動に取り組んでいます。私たちも、引き続き、ACTの助成活動などを通じて、現地NGOの取り組みを応援していきます。

<報告:辻本紀子(ACC21スタッフ)>

※冒頭で引用したカンボジアおよび日本の子どもについての各種統計の数値は、「世界子供白書2014」(発行:ユニセフ)による。
※文中のレートは1ドル=101.7470円(2014年5月23日(Bloomberg))。円換算値の100円未満は四捨五入した。